日々のこととか、小説の進捗状況とか。
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オリジナル書いてた時のテンション(つまるところ書き方)からの脱却を試みて見事に挫折っていうか……なんだコレ。
一応、お誕生日祝いに書いてたんですがあんまりにあんまりなのでとりえずここに投下。
お誕生日だった某絵描き様は、こんなのでもよろしければおっしゃって下さい。
名前変換してUpし直します。
何はともあれお誕生日おめでとうー。(ここで言うな)
「ホグワーツの春って、つまんないよネ」
それは、ある春の日の朝の、ことでした。
シリウス・ブラックとジェームズ・ポッターは、それぞれオレンジの皮を剥いている手を、ベーコンに伸ばそうとした手を止めて、学内唯一の日本人の友人に目を向けました。若干、頭の沸いた人間を見る目で。
「唐突になんだ?」
「次は何思いついたの……」
「つまんないつまんないつまんないヨー! 毎日毎日お勉強ばっかでサー」
「「っていうかお前なんでここにいる」」
「お花見、しようヨ」
何故かグリフィンドール寮のテーブルに座っているレイブンクロー生は、友人の突っ込みを無視して、言いました。
「日本の花見はキレイだヨー。薄紅色の桜って花を見上げながラ、お酒飲んだりお菓子食べたりお酒飲んだり」
「タオ、僕ら未青年だからお酒は飲めないよ」
「というわけだかラ、頑張って桜作っテ、悪戯仕掛ケ人!」
「「はあああああ!?」」
驚いたのは言われた二人です。長い長いテーブルを思いっきり揺らす勢いで叩いたので、ところどころの席からブーイングが上がります。スープがこぼれた、とか。コップが倒れてローブがびしょ濡れに、とかです。
二人は当然無視して、テーブルから身を乗り出し、猛然と抗議をしました。
「「なんで僕たちが!?」」
「エヴァンズー、エヴァンズー。お花見したくない?」
「お花見?」
リリー・エヴァンズはちょっと離れたところに友人と座っていたのですが、タオの声に気付いて、かわいらしく小首を傾げました。おかげで、ジェームズがノックアウトされてしまっています。
「え、エヴァンズかわいい……!」
「黙ってくれないかしら、ポッター」リリーは相変わらず、ジェームズに対しては容赦がありません。「ええと……、お花見って、この前話してくれた日本の文化のことよね?」
「そうダヨ! みんなで桜見ようよ! きれいダヨ!」
「そうなの……? うーん、気になるけど……、でも、タオ。その花、ホグワーツには……」
「ノープロブレム!」
答えたのは、タオではなくて、ジェームズでした。
「このジェームズ・ポッター! 君のためなら火の中水の中土の中桜の中!」
「ジェームズ、それなんかおかしくないか?」
「シリウスは黙る! というわけで、この悪戯仕掛け人が責任を持って桜を君に見せてあげるよ!」
「まあ。期待しないで待ってるわ、ポッター」リリーは言葉通り全っ然期待してない目で言いました。
さて、ここで慌てたのは悪戯仕掛け人の片割れ、シリウス・ブラックです。ただでさえレポートとか、中間のテスト勉強とか、忙しい時期なのにそんなことやってられないのです。正直、お前一人でやってくれ、なのです。
「待て待て待て! なんで僕も一緒に作ることになってるんだ!」
「僕たち親友だろう? シリウス」
「知るか! やりたきゃお前一人でや」
「日本ではネ! お好み焼きとか、たこ焼きとかの屋台がずらーって並ぶんだヨ! アスナ先生は甘いの好きだから、りんご飴とかきっと気に入るヨ! 屋敷しもべ妖精に作ってもらおうよ!」
「それはいいですねぇ」
シリウスの文句が途中で止まります。困ったことに、いつの間にか、アスナ・リーズ先生まで感化されているではありませんか。
これは断れません。断固として断れません。いや、断っても文句は言われないと思いますが、ちょこーっと悲しい顔で、「そうですか……」なーんて言われたらたまったもんじゃありません。「…………僕もやる」
「だよネー」
タオは、どうやら計画犯のようでした。
というわけで、悪戯仕掛け人二人の研究生活が始まりました。お花見をする、と言ってもホグワーツに桜はありません。まさか今から育てるわけにもいかないので、当然、魔法を使うことになります。
ぶっちゃけ、桜の資料はあるので、大広間の空の要領で幻を作ってしまえば簡単です。
が。
そこは天下無敵の悪戯仕掛け人。仕掛けるものが罠であれ何であれ、妥協は許しません。というわけで、桜の花びらのようなものをたくさん量産することにしました。それを魔法の風で散らせば、桜吹雪の完成、というわけです。
「……花見、とは違う気がしないか? ジェームズ」
「でも、花見の醍醐味は桜吹雪だってタオが」
複雑な気持ちにはなりますが、恋のお相手たちが喜ぶならなんでもいいので、二人はいそいそと桜吹雪制作を続けます。レポートも中間テストもほとんど無視しましたが、マグル学だけはきちんとレポートを出して、テストも受けました。二人にとっては、マクゴナガル先生よりアスナ先生の方が怖いのです(アスナ先生は、腹黒です。はい、復唱! おー!)。
ついでに、思いっきり彼らの私情ではじめたことなので、同じ悪戯仕掛け人のリーマス・J・ルーピンとピーター・ぺティグリューは不参加でした。
「付き合ってられないよねぇ」
「そ、そうだね……」
「じゃあ私はアスナ先生のところに行ってこようかな。最近、あの二人がいかないせいで、アスナ先生もつまらなさそうだし」
「え……」
「シリウスには内緒だよ? まあ、バレても押し通すけど」
「……うん」
リーマスは、かなり策士のようでした。
苦悩の末、二人は紙吹雪に変身魔法をかけ、更にそれを魔法薬で定着させる、という方法を編み出しました。実はそのアイディアの裏には、半純潔のプリンスなる謎の人物の助太刀があったらしいのですが、その辺りは他の人たちには秘密です。
「ありがとうね、ミスター・スネイプ」
「いえ、別に」
「でも、どうせなら堂々と手伝ってあげればよかったのに……」
「死んでもごめんです」
そしてついに、お花見の日がやってきました。
その日、ホグワーツは朝からハロウィン並のお祭騒ぎでした。大広間の空には春らしい青空が広がり、壁には「ヤタイ」という日本の風物詩が並んでいます。テーブルは全て撤去され、その代わり、各寮ごとに色分けされた「ゴザ」なるものが並んでいました。
「あら、おはよう、ブラック」
桜の木こそありませんが、割と本格的です。
「おはようございま―――って、何やってるんですか!?」
「何って……、りんご飴を売ってますよ?」しかも、先生たちがここぞとばかりにヤタイの店主さんをやっています。値札には「一つ一問」と書かれています。つまり、これは、りんご飴が欲しければマグル学の問題に答えろ、ということなのだろうなあ、とシリウスはちょっと遠い目をしました。「ねえ、ダンブルドア先生?」
「って、ダンブルドアまで―――!?」「ほっほっほ」
りんご飴は、きっと一つも売れないだろうな、と思いました。
「っていうか、実は売る気ないよね、アスナ。何個食べる気?」
「まだ五個目ですよ?」
「十分じゃん! いい加減にしなよ! 太」「何か言いましたか、ポッター?」
アスナ先生も女の子ですので、失言は許しません。ええ、断固として。
「いえ何も! それじゃあ僕たち、ちょっと桜散らしてくるから! いくぞシリウス!」
「ちょ、引っ張るなばか鹿! 今のお前の不手際だろ、何で僕まで巻き込む!?」
「親友だろ!?」
「人の恋路を邪魔するような親友を持った覚えはない!」
シリウスはまだアスナ先生の傍にいたかったようですが、恋路にウツツを抜かしていては本末転倒なので、さっさと仕事を終わらせることにします。「ったく……」音声拡張魔法のかかったスピーカーをすちゃっと構え、息を合わせて呪文を一つ。
「桜よ、舞え!」
その瞬間、悪戯仕掛け人がばらまいた桜の花びら(もどき)が大広間の宙を舞い始めました。
大広間からは歓声が上がり、悪戯仕掛け人も、自分たちの功績にまんざらではないようです(半分くらい半純潔のプリンスのおかげですが)。
ただの紙きれだった桜の花びらにかけられた変身魔法は、魔法薬の効果でしっかりくっついていて取れそうもなく、質感もまさしく桜のそれです。この辺は、タオに協力してもらったので間違いありません。
「おー。いいじゃんいいじゃん」
「大成功だな、シリウス!」
「だな」
「早速エヴァンズのところに行ってこよう!」
薄紅色の花が、大広間を舞っています。
「……懲りねぇやつ」
桜にしては、ちょっと濃い色をしていました。
「あら……」
ので、アスナ・リーズは舞い落ちた花びらをつまむや否や、複雑そうな顔をしました。隣でダンブルドア先生が笑っているので、尚更、頬が赤くなります。
「……ダンブルドア先生」
「ほっほっほ。いやなに、数年前を思い出してのお」
「……やめてください。本当に」
「あれは何年前じゃったかの」
やめろと言っているのに、ダンブルドア先生はお構いなしです。
アスナはちょっと、りんご飴用の串でダンブルドア先生のきらきらしたお目目を串刺しにしたい衝動に駆られながら、大人しく話を聞いています。出来ることなら耳も塞いでしまいたかったのですが、りんご飴をはもはもしているので、それも叶いません。
「マグル学の宿題で各国のマグル文化を調べていた生徒が一人、花見は元々、梅を見るのが主流だと熱弁して、大広間を梅の花でいっぱいにしてのお」
「……幼かったんです、私も……」
「いやいや、驚かされたものじゃ」
「…………」
薄紅色の花が、大広間を舞っています。
「きれいじゃのお」
「……そうですね」
アスナ先生は、やっぱり、りんご飴用の串でダンブルドア先生を串刺しにしたくなりましたが、この風流な景色を緑色の光線なんかで上塗りしたくなかったので、大人しくしていました。
舞い落ちる花びらは、桜よりも色濃い、梅の色をしていました。
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